KASUYAの税ブログ

相続税・贈与税

税理士新聞掲載  相続税の税務調査 その1

相続税の税務調査で、調査官から最初の方で質問されたことに対する納税者側の回答が、調査の進捗後半での以前の質問と関連した質問への回答をするにあたって、前の回答と矛盾するため、その回答が制約を受けてしまった経験はありませんか。詰将棋の打たれた一手が、最後の王手に効いてくるような、切れのある調査官の質問に対面したことはありませんか。

所得税、法人税の所得調査では、あまり、経験をしないが、相続税では、先を読んだ質問のため、最後は、グーの根も出ないというような質問に何回か経験したことがあります。

所得課税の調査と相続税の調査の大きな違いは、どうも、事前準備調査の質、量が異なっているので、このようなことが、起き、感ずるのではないかと考えるようになりました。なぜなら、相続税調査では、被相続人及びその家族の預貯金の出し入れ情報を実地調査の前に入手し、調査官が疑問点や問題点を洗い出し、実地調査に臨んで、質問をしているためではないかと考えるようになってきています。また、このような鋭い質問検査に会ったと感ずるのは、金融資産が被相続人のものか相続人のものか等金融資産に関連したときのものが多いようです。

ところで、この稿の目標は、いわゆる、税務調査に関する納税者の法的権利問題を論述するものではありません。相続税の調査が、どのように進められ、相続財産の非違を調査官が指摘する過程を納税者の視点からモニタリングすることにより、調査の意図やターゲットを知ることで、納税者の権利を守る立場から、何か、今後の相続税の税務調査の立合で、役立つヒントが得られることをめざして、著すものであります。税論卓説の学才的で、啓蒙的なものとは異なり、皆様の相続税の立合で、以前の税務調査ではその質問の意図がわからなかったものが、この記事を読んで、そのような意図があるから、このような調査の手続きや質問が行われているのだと理解してもらうことを目指したものです。また、今後、私が述べることで、そんなことはない、このような考えだと、異論については、大歓迎致しますので、是非、編集部の方にお寄せください。

 

相続税調査は財産の調査で推計課税はない

 

相続税は、相続財産を課税対象としています。そのため、財産は、相続開始時点に存在していることを前提としています。

所得課税の課税標準は、所得ですが、法人税であれば、益金から損金を控除した所得が課税標準です。所得税であれば、収入金額から必要経費を控除した所得金額が課税標準であることはいうまでもありません。この所得の概念は、財や労務等を使用した経済活動等を通して派生した益金や損金などの産出された貨幣的量的概念であり、財産と異なり、所得はその存在を貨幣的な概念として認識できるとしても、指摘することはできません。所得は、事業年度等で区切られた歴史的な時間のなかで、貨幣価値で測定された経済的価値の量である益金と損金との差額概念であるため、時には、所得の推計ということもあります。つまり、推計とは、申告されていない財産の存在を前提とすると、益金、すなわち、所得の存在を前提としないと、未申告財産の形成ないし存在を説明できないときに、その所得の存在を推定します。例えば、申告所得が低いのに、高額な生活用財産の存在がその申告所得から説明できない場合などに、所得の推計は起こりえますが、その財産の存在がない場合には、推計はできません。

相続税は、財産が課税標準となるため、財産の存在の推計という考え方は存在しません。例えば、被相続人が死亡前1年前に、1千万円を預金から引き出し、相続人に贈与された事実もなく、そのお金がタンスにもなく、どこにあるか不明の場合に、被相続人がそれを使用したのかどうかわからない場合があるとした場合、相続人家族が隠匿したのではないかと疑われますが、しかし、その事実がなく、そのお金の存在がわからなければ、どこかに、隠されている可能性があるからと推定して、すなわち、そのお金の存在がないのに、あることを前提として、相続税は課税されることはありません。

相続税の税務調査は、相続税申告書に記載された財産が、税務署が未申告財産の存在を疑い、あるいは、確認すべき状況にあるときに、実地調査が行われます。納税者である相続人は、その調査されている理由については、多くの場合、不明であるため、何か間違いを犯してしまったためと、不安と心配にさいなまれる状況に陥りますが、財産の存在を前提にした税務調査であることを理解して税務調査を受ける場合には、精神的な不安感が軽減されましょう。つまり、相続財産がこれだけあるべきだとの推定や推計だけでは、相続税の課税処分がされることはなく、現実の財産の存在を前提として、その財産が被相続人の相続開始時点において、帰属していたものとして、所有していたものとして、明らかになった場合のみ課税されるものです。

 

相続税申告書提出後の実地調査選定までの流れ

 

相続税の実地調査が行われるまでには、税務署のなかで、その調査対象として選定するための作業があります。おおよその流れは、次のようになっているといわれています。

1. 相続税の申告書が提出されると、単純な計算誤りがないか等の簡易審査が行われます。

この簡易審査で、誤りが発見された場合には、税理士か納税者に連絡し、是正措置が取られます。この是正措置は、原則として、行政指導として、取り扱われるため、加算税は課税されません。そのため、相続税申告書を申告期限間近に提出するよりも、申告期限よりも、早めに、提出しておけば、申告書の検算をしてくれるので、そのことを考慮して、早期提出をすることはメリットがあるものと考えます。

2. 申告審理対象事案の抽出

この作業は、相続税の申告案内をして、納税者からの回答が妥当なものであるかの検討、期限内申告を想定していたものと申告が想定に妥当しているのか、お尋ねの回答のないものや、申告のないもので、相続税の課税が見込まれるなどの選別がされます。

3. 上記2で抽出されたもののなかから、実地調査対象事案の粗選定が行われる。

4. 3で、粗選定されたものを絞り込みをします。

5. 実地調査対象事案の選定理由

粗選定された対象事案を絞り込む基準は、署内では、準備されていると想定されるが、知る由もない。その選定理由といわれるものとして、つぎのようなものといわれています。

  • 高額な申告がなされたもの
  • 被相続人の職業、所得状況からみて不表現資産(金融資産)の申告が少ない。

ここでいう職業とは、高額所得が予想される医師、弁護士等の専門士業や芸能人、大会社の役員などがあたるものと考えられます。

  • 不表現資産の申告が高額と予想されるもの
  • 高額債務に見合う固定資産等の財産がないもの
  • 外部収集資料からみて、申告額が明らかに過少なもの
  • 著名人又は社会的に注目を集めた者
  • 国外取引や信ぴょう性高いタレコミ情報等からみて調査が必要と認められる事案
  • 家族名義の資産が多額で、その資産形成状況に疑義があるもの

税理士が相続税の申告代理を受任する場合は、被相続人の財産の調査は勿論のこと、家族の金融資産に形成状況、残高等はヒヤリングすべきでしょう。

 

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