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KASUYAの税ブログ

事業承継税制

事業承継税制一般措置と特例措置の違い ”税理士新聞掲載”

新しい事業承継税制 3

   前号に引き続き、新事業承継税制の手続問題について述べる。事業承継税制の根幹となすものは、相続税、贈与税の納税猶予手続もさることながら、年次報告書、届出書の提出手続等の手続ミスで納税猶予が取り消さるなど重大な結果をもたらす。そのため、その手続を理解したうえで、新事業承継税制に対応していかないと重大な結果を招来しかねないものと考えるので、あえて、「中小企業経営円滑化法 申請マニュアル 平成29年4月版」を一部引用のうえ述べることとする。   贈与者(先代経営者)に相続が発生した場合-現行事業承継税制 1.相続税で納税猶予を受ける場合(切替確認をする場合)  前々号で、経営承継期間(贈与税申告期限から5年)の現行の年次報告書、届出書の提出期限について、説明した。この経営承継期間内に、先代経営者(経営承継贈与者)に相続が開始した場合で、贈与税の納税猶予から相続税の納税の猶予に切替確認(円滑化法規則13条)を8か月以内に受ける。その事業継続期間(経営承継期間)は、相続が開始した日に関わらず贈与税の申告期限から5年間とされている。すなわち、相続税の納税猶予が開始されたとしても、贈与税の経営承継期間の5年間、毎年、年次報告書をその報告書提出期限(毎年6月15日)までに、提出しなければならない。    2.相続税・贈与税の納税猶予の取扱い  1で納税猶予を贈与税から相続税に切替た場合及び経営承継期間後に相続が発生した場合の取り扱いは、措置法70条の73によると、納税猶予贈与税額に対応する特例受贈非上場株式等を贈与者(先代経営者)から相続により取得したものとみなされる。贈与者の相続税の特例受贈非上場株式等の課税価額は、贈与時の価額で計算する。  贈与者が死亡した場合には、経営承継受贈者の贈与税のうち納税猶予を受けた贈与税は免除される(措置法70条の715項)。経営承継受贈者は、納税猶予の免除を受けるため、都道府県知事に、臨時報告書を相続開始後8か月以内に提出しなければならない。そして、税務署に対して、相続開始後10ヶ月以内に「免除届出書」を提出しなければならない。 3.相続税の納税猶予を受けない場合(切替確認を受けない場合)  先代経営者(経営承継贈与者)に相続が開始した場合で切替確認を受けないときには、相続又は遺贈により取得したとみなされた株式等(措置法70条の73)について、切替確認書の添付(措置法規則23条の12第7項、8項)がない場合、相続税の納税猶予を受けることはできない。それ故、贈与税の納税猶予の対象となった株式等の贈与時の課税価額に対応する相続税額を負担することとなる。   贈与者に相続が開始した場合の切替を受けるための要件  先代経営者(経営承継贈与者)に相続が開始した場合には、切替確認(円滑化法規則13条)をする必要がある旨述べたが、贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予に切替ることができる適用要件がある。それをクリアーしないと相続税の納税猶予が受けられない。  その適用要件とは、次のものをいう。

1.    会社及び特定特別子会社が上場会社等または風俗営業会社でないこと

2.    資産保有型会社ないし資産運用型会社でないこと

3.    営業収入があること。

4.    常勤従業員数が1人以上であること。特別子会社の場合は5人以上であること。

5.    経営承継受贈者が代表者で、議決権総数の51%以上を同族関係者と合わせて保有していること。

6.    代表者以外の者が拒否権付の種類株式を有していないこと

 

都道府県知事への随時報告

 随時報告とは、認定取消事由に該当したこと又は贈与税若しくは相続税の納税猶予制度の適用を受けている経営承継受贈者若しくは経営承継相続人の死亡当による納税猶予額の免除を受けるにあたり一定の事由に該当しないことを報告するものである。  事業継続期間(経営承継期間)中に、認定取消事由(雇用維持要件を満たさなかった場合及び経営承継贈与者が死亡した場合で切替確認を受けていない場合を除く。)に該当した場合は、該当した日の翌日から1が月以内にその旨を随時報告しなければならない。  後継者が死亡した場合及び後継者にやむを得ない事情が発生し、認定中小企業者の代表者を返上したうえで次の後継者(3代目)へ猶予株式を贈与した場合には、その該当した日の翌日から4か月以内にその旨の随時報告をしなければならない。  経営承継受贈者又は経営承継相続人の死亡等があった場合の随時報告の結果、一定の事由に該当しないことが確認された場合には、都道府県知事から確認書が交付される。  当該該当する日(経営承継受贈者の死亡の日)の翌日から6ヶ月を経過する日までに税務署長に当該確認書を添付した一定の届出書を提出することで納税猶予税額の免除を受けることができる。   贈与者(先代経営者)に相続が発生した場合-新事業承継税制では  新事業承継税制の適用手続では、前号で述べたように、平成39年12月31日までの贈与につき、平成35年3月まで特例承継計画の申請をしその承認を受けて、その贈与税の申告、納税猶予の申請、認定書交付書をすることを述べた。同じく、相続の場合も、平成35年3月までの申請を要件として、平成39年12月までの相続について適用され、その期限内申告をし、その納税猶予、認定書の添付義務について述べた。  特例贈与者の死亡に伴う相続税申告と相続税の申告手続きは、現行と同様の切替手続、申告手続き、納税猶予手続等をとるものと考えている。   税理士事務所の報告、届出、申告等の手続管理をどうすべきか  前号と今号で、事業承継税制に関する報告、届出、申告等の関する手続を前掲経済産業省の申請マニュアルを引用しながらその手続等の一部を抜粋して、主要な手続きを述べてきた。この事業承継税制では、手続ミスは納税猶予が取消事由に該当し、納税者から損害賠償を受けることになる。そのため、事業承継税制に取り組む税理士はこの手続をミスなく業務を進めることができるかどうかがポイントとなる。そのためには、税理士事務所の手続管理の体制を確立する必要があろう。それぞれ、事務所ごとの管理手法があるかと思うが、私が考える方法を紹介する。 1.    スケジュール管理ソフトを導入する。その入力については、専担者及びその代替者 によっておこなう。 2.    事業承継手続の管理責任者は、納税者からの損害賠償金を負担すべき税理士が必ず担当し、設定スケジュールの確認、チェックをする。 3.    依頼会社とは、業務委託契約を事前に締結し、依頼者側の情報提供義務を明記し、月次か四半期ベースの依頼会社の事業承継に関連する情報収集を行うとともに、情報提供を促す。 4.    年次、随時、臨時の報告書、届出書、申告書等の提出期限管理に関し、事業承継税制を扱う税理士と共同で、スケジュール管理等が法令等に準拠したものなのかどうかの手続を第三者の目から監査ないしレビューを受ける。 5.    事業承継税制の適用の手続は長期間管理されなければならないため、責任税理士を代替する税理士に情報の共有と進捗状況の理解をさせる。 6.    スケジュール管理ソフトはクラウドタイプのものであれば、スケジュール管理のバックアップについて、注意しなくてもよいが、事務所のサーバー等への保管の場合には、バックアップ体制をとる。 7.    損害賠償に備え、依頼会社から事業承継業務サービスに対する管理報酬を請求し 賠償保険があるのであれば、保険に加入するとともに、賠償責任準備金を事務所で引き当てをする。

税理士 粕谷幸男

     

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