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KASUYAの税ブログ

相続税・贈与税

相続手続と相続財産(相続人名義預金)の調査  その5

(吉野画伯 提供) 相続手続と相続財産(相続人名義預金)の調査  その5   質問: 夫が先日、亡くなりました。妻である私は、専業主婦で、外で働いたことは有りません。夫から渡された生活費は私の銀行口座に入れ、生活費の余剰分はその口座に貯めています。その口座は、夫の相続税申告にあたり申告した方がよいと担当税理士からいわれました。生活費の蓄えは私の才覚で貯めたもので私の財産ではないかと思いますので納得がいきません。なぜ、私の名義の財産を夫の相続税申告で申告しなければならないのでしょうか。   回答: 結論からいいますと、相続人名義の普通預金口座であっても、その預金の原資の出捐者、その預金口座の管理・運用状況、その預貯金の原資の贈与の有無等を総合的に判断して、相続人の名義の銀行口座であっても、被相続人に帰属する預金として判断されることになります。 そこで、ご質問の名義預金への入金の原資は、被相続人からの生活資金の入金です。その預金の管理の出し入れは、妻が行っていたとしても、資金が不足したときの意思決定は夫がもっていたものと考えられます。また、妻の才覚でためた生活費のヘソクリは夫から贈与されたものといえるのかがポイントとなります。 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる(民549)とされ、贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する(民551)とされています。すなわち、生活費のヘソクリの口座の余剰額がその月のヘソクリ額なのか贈与時の通帳残高なのかを贈与者が特定して、そのお金を引き渡すことが贈与には求められています。妻が生活費を倹約してヘソクリをして貯めたといっても、贈与者の贈与の意思が不明確なことと、贈与の目的として特定した時の状態でヘソクリを引き渡したかどうかが不明確です。 また、生活資金の管理については、通常、民法でいう寄託と考えられております。寄託とは、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを受諾することによって、その効力を生ずる(民657)とされ、無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う(民659)とされています。生活費のヘソクリは、無駄な消費支出をさけ合理的、経済的に生活費を運用管理した結果、生活費の余剰額がヘソクリとなったといえますが、それは自己の財産に対するものと同一の注意義務の結果ともいえなくもありません。ヘソクリを贈与財産とするためには、夫から妻への金銭に引き渡しが必要ですので、総合的に考えると、相続人の名義預金を被相続人の相続財産として相続税申告をすることと、遺産分割協議の対象とすることが妥当ではないかと考えます。

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