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相続税における配偶者居住権の解説

相続税における配偶者居住権の解説   1.配偶者居住権創設の趣旨 配偶者が相続の発生により居住用不動産を相続することで、配偶者の法定相続分(相続人が子と配偶者のケースでは2分の1。)を超える結果、相続後の生活資金である金融資産を相続できないケースがあるため、配偶者居住権を創設することで、老後の生活資金を優先的に確保できるよう、配偶者の相続後の生活を確保する措置として、居住と生活資金の確保を目的に、創設された。   2.制度の内容 ① 配偶者居住権の存続期間は、原則、終身です。分割協議等で、終身でなく、有期の期間を定めることができます。 ② 配偶者は善良な管理者の注意をもって居住建物の使用収益ができる。 ③ 配偶者居住権は譲渡することはできません。なお、配偶者居住権の存続期間が終身としても、その合意解除、放棄は可能とされています。   3.配偶者居住権の評価の考え方 (1) 配偶者居住権の評価を相続税法(第23条の2)で定める理由 相続税法(第22条)では、相続税、贈与税の財産の評価額は、特別な定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価によることとなっています。この相続税法の時価とは、課税時期において、それぞれ財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、財産評価基本通達の定めによって評価した価額による(財基通1(2))とされています。しかし、配偶者居住権は譲渡をすることができない(民1032条2項)ため、自由な取引によって成立する時価を形成できません。そのため、相続税法で、定めたのです。   (2) 配偶者居住権の評価の方法(相23条の2) 配偶者居住権の評価の方法は次のように計算します。   () 配偶者居住権の評価方法 配偶者居住権の価額は、次の算式により評価することとされています。   ① 居住建物が賃貸の用に供されておらず、かつ、共有でないものとした場合の時価×賃貸の用に供されている部分(注1)以外の部分の床面面積÷居住建物の床面積×被相続人が有していた持分割合(注2)=居住建物の時価   (注1) 居住用建物の一部が貸し付けられている場合には、配偶者は相続開始前からその居住建物を賃借している賃借人に権利を主張することができないため、実質的に配偶者居住権に基づく使用収益をすることができない部分を除いて評価する必要があるため、賃貸部分は除かれる。   (注2)配偶者居住権は居住建物の全部に及ぶものの、被相続人の所有権が共有持分である場合には、その所有権の評価額は建物全体の評価額を共有持分に応じた価額を基に算定する。   ② 居住建物の時価―{居住建物の時価×(耐用年数(注1)―経過年数(注2)―存続年数(注3))÷(耐用年数―経過年数)×存続年数に応じた法定利率による複利現価率=配偶者居住権の価額   (注1) 耐用年数は、耐用年数省令に定める住宅用の耐用年数を1.5倍にしたものを使用します。端数処理は、6月以上端数切り上げ、6月未満端数切り捨て。   (注2) 経過年数は、居住建物が建築された日(新築時)から配偶者居住権が設定されたときまでの年数をいいます。端数処理は、6月以上端数切り上げ、6月未満端数切り捨て。 配偶者居住権が設定された時とは、 ① 遺産分割の場合には、協議成立日、 ② 遺産分割調停の場合には、調停成立日 ③ 遺産分割審判の場合には、審判確定日 ④ 遺言の場合には、相続開始の時   (注3) 存続年数は、 ① 終身の場合 配偶者居住権が設定された時における当該配偶者の平均余命 ② 有期の場合 配偶者居住権が設定された時から配偶者居住権の存続期間満了の日までの年数 端数処理は、6月以上端数切り上げ、6月未満端数切り捨て。     () 居住建物の評価方法 居住用建物の価額は、次の算式により評価することとされています。   ① 居住建物の時価―配偶者居住権の価額   () 敷地利用権の評価方法 敷地利用権の価額は、次の算式により評価することとされています。   ① 居住建物が賃貸の用に供しておらず、かつ、土地等が共有でないものとした場合の時価×居住建物の賃貸の用に供されている部分以外の部分の床面積÷居住建物の床面積×被相続人が有していた居住建物の敷地の持分割合と当該建物の持分割合のうちいずれか低い割合=居住建物の敷地の時価   ② 居住建物の敷地の時価―居住建物の敷地の時価×存続年数に応じた法定利率による複利現価率=敷地利用権の価額   () 居住建物の敷地の評価方法 居住建物の敷地の価額は、次の算式により評価することとされています。   ① 居住建物の敷地の時価―敷地利用権の価額=居住建物の敷地の価額         参考文献 令和2年度版 コンメンタール相続税法、配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例(令和2年7月 国税庁課税部 資産評価企画官)      

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